スピーカー開発秘話(その1)

戦後の1940年代後半から1954年までに録音された、今は亡きすぐれた演奏家の演奏を、できるだけ間近かに聴きたい、という願望に駆り立てられて、これまで多くのスピーカーを開発してきた。

そのうちでも最も常軌を逸していたのが、中国の飛行機工場で製作してもらった、45Cのパイプを叩き上げた後、旋盤で微かなテーパーをつけたパイプを、二重に挿入して、1cm2当たり数トンのプリテンションの掛かったエンクロージャーを作ったことである。前後の蓋は、25mm厚の超超ジュラルミン9095を使用し、叩いても金属音がせず、当時は理想のエンクロージャーであると自負していた。

小型ながら重量のあるエンクロージャーであったが、しかしながらこれでも軽すぎて、振動板が動く代わりに、エンクロージャーが動いてしまうため、ジルコン入りパイプでがんじがらめにしたが、それでも片側だけで100kgは超えていたはず。

これだけ重量のある、しかも共鳴しない支持体に取り付けたにもかかわらず、耳をそばだてると、明らかに、空気ではなく、エンクロージャーが動くということを感じとり、動く位ならば、逃げるほうがいいと考え、これを糸吊りとすることにした。

1