スピーカー開発秘話(その3)

大きな転機を与えてくださったのは、当時すでに80歳を越えておられた、発明家の武宮寿一さんである。段ボールで次の図のようなエンクロージャーを作ってきて、我が家で鳴らして見せた。音は全く持って、つまらないものであったが、その構造から伺える発想の独創性には驚嘆させられた。

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このスピーカーの特徴は、すでに江川氏が特許申請した、二つのドライヴァーのマグネット同士を結合させることで、振動板の反作用をキャンセルしている手法に加えて、前方のスピーカードライヴァーの後方面と後方スピーカードライヴァーの後方面とを同一のチャンバーに納めることにある。

これは江川氏のように二つのスピーカーを同一のエンクロージャーに納めたものではない。そもそも武宮式では、エンクロージャーは単なるチャンバーに過ぎず、スピーカーシステムではなく、新たなドライヴァーである。であるがゆえに、これをあらたにエンクロージャーに入れることもできるし、また平面バッフルにマウントすることもできる、まったく新しい独創的なドライヴァーユニットとなっている。音波は粗密波である。三次元の波を二次元で考えている。