スピーカー開発秘話(その4)

しかしながら、この二つのドライヴァーによって構成される新しい複合ドライヴァーには大きな問題があった。二つのドライヴァーの表と裏とを一つのチャンバーに納め、エンクロージャー内の圧力を一定に保つ手法は、すでにエグルストンが製品化している。無論、これはチャンバーではなく、従来通りのエンクロージャーに収められている二台のドライヴァーによって構成されているが、そこには大きな問題が解決されずに残されていた。

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この方式では、確かに、エンクロージャー内の内圧をドライヴァーの一方は高め、他方は低める、という動作の結果、振動板の運動の如何にかかわらず、内圧は外気と同一に保たれるはずであった。しかし実際には、両者は数十センチの距離を持って離れているために、ドライヴァー付近の気圧の変動は瞬間的に伝達されて解消されることなく、外気と同等の気圧を確保するための、エンクロージャー内部における一定気圧の遍在は実現しえない。さらにもって、気体は、容易に圧縮可能な物質であるために、一方のドライヴァー動くことによってその付近の空気は容易に圧縮されてしまい、一方のドライヴァーのもたらしたエネルギーが他方のドラヴァ―に完全には伝達されない。つまりエンクロージャー内部のそれぞれのドライヴァー付近の気圧は、それらが相互に逆相で振動しているにもかかわらず、一定には保たれない。