スピーカー開発秘話(その5)

同一エンクロージャー内において、逆相で動く二つのドライヴァー付近の内部気圧を外気と同一の一定に保つためには、まずできるだけエンクロージャーの空気を少なくする必要がある。空気が圧縮と膨張が起こり得なくなるほど、その量を少なくする必要がある。例えば、1m3の空気を1mm3分、圧縮するのは簡単だが、3mm3の空気を1mm3分、圧縮するのは大変困難であるからだ。その結果、それが首尾よく実現した場合、両振動板はあたかもほぼ重さがゼロに等しいほどの軽い金属でつなげられたごとく、密接な力学的な補完作用を行うことになる。チャンバー内部(これまではこれをエンクロージャーと言ってきたが以後はこう呼ぶことにする)においては、空気はいわば個体のように固くなっているからである。

さらにここにはもう一つの課題がある。このチャンバー内において、二つの振動板によって生じる逆相・音波が相互に有効に解消しあうためには、二つの振動板はできるだけ近くに設置される必要がある。これが完全に実現すると、エンクロージャー内においていかなる音波も生じないことになり、その結果、薄くて軽い振動板を通過して、逆相音が外部に漏れることはなくなる。

だからといって、両ドライヴァーを繋げるチャンバーをただただ小さくすればいいというものではない。チャンバーが長いパイプのように細長いものになると、二つのドライヴァー付近の大きな空間は、それぞれ独立して共振し、二つのFoを持つことになりその相互作用は著しく減少することになる。