スピーカー開発秘話(その7)

そこで新たな試みとして、箱鳴りと背圧が不可避であるエンクロージャーをなくし、板の鳴きが不可避であるバッフルをなくし、奥から音が出てくることが不可避なホーンなしのスピーカーシステムを作らなければならないという課題に取り組むことになった。それにはドライヴァーの逆相を、いかにして順相から引き離すかであった。これまで逆相を順相から離すためにはほぼ三つの方法があった。種々の音響迷路として、長いパイプを使うか、あるいはバッフルで仕切るか、もしくはエンクロージャーで囲うしか方法がなかった。そこで当社が最終的な手法として編み出したのは、ドライヴァーを多数連結して、逆相を遠ざけることであった。それによって音響迷路の持つ共振、また位相の遅れを解消することができると考えたからである。それはこれまでの成果である、四個一組のドライヴァーを基礎にして立ち上げることで可能となった。

この方式の効果は絶大なものであった。単に小口径のドライヴァーで、エンクロージャーなし、バッフルなし、ホーンなしにもかかわらず、低音が出るというのではない。従来では考えられないすぐれたトランジェントを獲得したのである。たとえば、このシステムの振動板を指で軽く押してみると良い。相当な力で押さないと、つまり振動板がへこむぎりぎりまで押さない限り振動板は動こうとしない。いわばコンプライアンスが以上に低い。ということは、低音は出ないはずなのだが、実は逆である。その原理については、以下の特許申請の書類を参照していただきたい。ドライヴァーを互いにパイプで連鎖状に繋ぐことによって、Foはその率こそ下がるものの、どんどん低下していく。つまりこのシステムでは、コンプライアンスは低く、Moは小さく、しかもFoは低いという実にこれまでの理論では説明できない現象が実際に起こっている。