スピーカー開発秘話(その8)

一般にコイルと磁石が振動板を駆動するのではあるが、実は振動板には空気の大大きな負荷がかかっていることはあまり注目されていない。今回のこのチェーン状につなげられたシステムでは、この空気負荷が最初のドライヴァーと最後のドライヴァーでは確かに存在するが、その間の14個のドライヴァーに関しては、それを動かす空気は極めて小さく、ほぼ亡きに等しい。その結果、振動板を動かす以外の駆動力は最初と最後のドライヴァーに伝達されることになり、いわば50mmの振動板に16個のコイルが装備されているのに近い状態が成立していることになる。その結果、これまでにスピーカーでは再生できなかったような、優れたトランジェント特性を得ることになった。

そのことを支えているのが、各々の振動板に挟まれた空気の圧倒的な少なさである。微細な量の空気を圧縮、伸長させることは大変困難であり、それがあえて起こる場合、それは個体に近くなる。その結果、内部の14個のコイルの駆動力はすべて最初と最後のドライヴァーに作用することになるのである。

また振動板と振動板との間の距離が極めて小さいために、互いに逆相の音波を生成するために、それらをつなぐパイプ内においては、低い音から高い音まで、相殺され、その結果ほぼ無音となると同時に、内部の振動板は互いに振動体全体を押すために、最初と最後の振動板は普通であれば、コイル付近のみにしか起こらないピストン運動が振動板全体に起こることになり、分割振動によるひずみが生じない。その結果、スピーカーでは聞くことのできなかった音が生成されることになる。